糖尿病の薬物療法について

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糖尿病の各種治療薬

2016/02/22

糖尿病治療の基本はあくまで食事療法と運動療法です。しかし食事と運動療法を頑張っても十分な血糖コントロールが得られないときには薬物療法を考慮します。

2009年からDPP-4阻害薬(ディーピーピー フォー そがいやく)やGLP-1受容体作動薬(ジーエルピー ワン じゅようたいさどうやく)という新しい作用機序を持つ薬が相次いで発売され今や広く普及しています。更に2014年からSGLT2阻害薬(エスジーエルティー ツゥ そがいやく)という新しい作用機序の薬剤が発売され、現在6種類になりました。糖尿病の状態は一人一人で異なり、その人それぞれの病態に合った投薬が必要だと言われていますが、まさにその多様性に答える選択肢(薬)が増えたということになります。

経口糖尿病薬(飲み薬)
経口薬はその作用機序(どのような働きで血糖を下げるのか)から、下記の7つに分類されています。
  • 1.スルホニル尿素薬
  • 2.速効型インスリン分泌促進薬
  • 3.α-グルコシターゼ阻害薬
  • 4.ビグアナイド薬
  • 5.チアゾリジン薬
  • 6.DPP-4阻害薬
  • 7.SGLT2阻害薬
食事、運動療法が無効な場合いずれかの薬を選択して開始、血糖値を測定しながら投与量を調整し、時には複数の薬を併用することがあります。海外のガイドラインでは最初ビグアナイド薬から始めることが推奨されていますが、日本と事情が異なることもあり、日本の治療ガイドでは投薬の順序について指定はありません。
SGLT2阻害薬
スーグラ、アプルウェイ/デベルザ、フォシーガ、ルセフィ、カナグル、ジャディアンスの6種類、7販売名がこのグループに属します。薬理作用を簡単に説明すると、腎臓からの尿糖排泄を増やして血糖低下させるというユニークなものです。体内のグルコース(=ブドウ糖)を体外に排泄することから体重が減少します。一般に糖尿病治療に使う薬で体重が減るのは注射薬のGLP-1作動薬だけでしたから、飲み薬で体重が減ることは大きなメリット、福音と言えます。
インクレチン関連薬 DPP-4阻害薬
最近ではDPP-4阻害薬から投薬を開始することが多くなり、一般内科での初回投薬治療の過半数がこの薬剤になったというデータもあります。DPP-4阻害薬は現在ジャヌビア/グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ(販売名)の7種類が承認されています。また服薬の利便性を改善する可能性のある、週1回の服用で有効なザファテックとマリゼブが2015年に発売されました。
これらの薬はその名の由来通りインクレチンというホルモンを増やすことで血糖降下作用を示します。詳細な説明はさておき、期待される理由を挙げてみましょう。
  1. 低血糖が少ない。スルホニル尿素薬と併用する場合はその限りではありませんが、この薬剤は「上昇した血糖値に見合うだけ膵臓からインスリンを出させる」作用を持っていますので、低血糖を起こす危険性が極めて低くなりました。
  2. 体重増加の傾向はない(DPP-4阻害薬)か、むしろ体重は減る傾向が認められます(GLP-1受容体作動薬)。
  3. グルカゴンというホルモンがあり、血糖値の調節に大事な役割を果たしています。インクレチンにはインスリンに対する作用だけでなくグルカゴンを制御する働きがあり、結果として血糖値に好ましい作用を持っています。
インクレチン関連注射薬(GLP-1受容体作動薬)
2010年からGLP-1受容体作動薬が使えるようになり現在販売名ビクトーザ、バイエッタ、リキスミア、ビデュリオン、更に2015年に週1回注射のトルリシティが発売され5種類になりました。すべて注射薬なので自分で注射する必要があります。前3種種類は1日1ないし2回、ビデュリオンとトルリシティは週1回の注射で済みます。
最近このグループの薬は2つに分類、評価されています。ビクトーザ、ビデュリオンとトルリシティは長時間型で食前血糖低下に優れ、バイエッタとリキスミアは短時間型で食後血糖低下に優れるという特徴があります。このグループの薬も各種抗糖尿病薬との併用組み合わせが次第に可能となり、特にインスリンと併用するとお互いの長所を引出す興味深いデータが示されています。
従来糖尿病治療の注射薬はインスリンのみでしたが、このGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と共にインクレチン関連薬という範疇の薬です。特にこのGLP-1受容体作動薬には体重減少効果があるのが特徴で、肥満を伴う糖尿病の方には早期から使う症例が増えています。副反応として吐気が強くでる場合があり、注意が必要です。
注射薬(インスリン)
名前は有名だと思います。患者さん自身が自分で自分に打つ注射薬(自己注射)として、インスリン製剤が多種類販売されていますし、これまでは注射薬と言えばインスリンが代名詞でした。インスリン注射をするようになれば糖尿病治療の終着点、そんなネガティブな印象を持っている方もいらっしゃることと思います。しかし注射薬という形式だけで重症度を推し量るのは今や意味がないことは、先ほどのGLP-1受容体作動薬が注射薬であることを見ればお分かりになると思います。
糖尿病治療におけるインスリンの重要性は、いかに新薬が出ようともその有効性と安全性を考えると消えることはないと思います。
2013年に血糖降下作用が24時間を超えて持続するトレシーバ、2015年に同じ範疇のランタスXRが発売され、平坦でピークのない血糖降下作用を持つ特徴から血糖値が安定し低血糖が少なくなりました。またトレシーバと超速効型インスリンとの配合製剤ライゾデグも2015年に発売されています。2015年にはまた、ランタスと同じ有効成分を持つバイオ後発品インスリングラルギンBSが発売され、価格の面で随分助けになりました。
インスリン製剤の選択肢は増えて随分多様化していますが、一方で注入器や注射針の進化もあり取扱いの難しさや注射の痛みは随分軽減されています。

限られた紙面では十分書ききれませんが、糖尿病治療に新しい“武器”が加わり、その恩恵を受ける患者さんも多いのではないかと期待します。

参考図書「糖尿病治療ガイド 2014-2015(社団法人 日本糖尿病学会編 文光堂)

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