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- › 糖尿病の薬物療法
糖尿病治療の基本はあくまで食事療法と運動療法です。しかし食事と運動療法を頑張っても十分な血糖コントロールが得られないときには薬物療法を考慮します。
2009年末から現在に至るまで、DPP-4阻害薬(ディーピーピー フォーそがいやく)やGLP-1受容体作動薬(ジーエルピー ワンじゅようたいさどうやく)という新しい作用機序を持つ薬が相次いで発売され、糖尿病薬物療法の新しい展開が期待されています。糖尿病の状態は一人一人で異なり、その人それぞれの病態に合った投薬が必要だと言われますが、まさにその多様性に答える選択肢(薬)が増えたということになります。
- 経口糖尿病薬(飲み薬)
- 経口薬はその作用機序(どのような働きで血糖を下げるのか)から、下記のように6つに分類されています。
- 1.スルホニル尿素薬
- 2.速効型インスリン分泌促進薬
- 3.α-グルコシターゼ阻害薬
- 4.ビグアナイド薬
- 5.チアゾリジン薬
- 6.DPP-4阻害薬
私のクリニックでは現在、DPP-4阻害薬(商品名;ジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ)、ビグアナイド薬(商品名;メトグルコ、メデットなど)から開始することが多くなりましたが、状況により他の薬剤から始めることもあります。
作用機序の異なる2種類の薬を併用することはよくありますが、時には4種類以上組み合わせることもあります。2010年以降2種類の薬を1錠にまとめた配合薬が発売され、多種類の薬を必要とする方には便利になってきました。 - 注射薬(GLP-1受容体作動薬)
- 2010年から2種類のGLP-1受容体作動薬が使えるようになりました。商品名ビクトーザとバイエッタです。両者とも注射薬なので自分で毎日注射する必要があります。
従来糖尿病治療の注射薬はインスリンのみでしたが、このGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と共にインクレチン関連薬という範疇の新薬です。特にこのGLP-1受容体作動薬には経口剤のDPP-4阻害薬にはない、体重減少効果があるのが特徴です。欧米では肥満が大きな問題ですので、体重減少効果を期待して選択される場合があります。 - 注射薬(インスリン)
- 名前は有名だと思います。患者さん自身が自分で自分に打つ注射薬(自己注射)として、インスリン製剤が多種類発売されています。これまでは注射薬と言えばインスリンが代名詞でした。インスリン注射といえば糖尿病治療の終着点、そんなネガティブな印象を持っている方もいらっしゃることと思います。
しかし前項のGLP-1受容体作動薬のようにインスリン以外の注射薬が出てくると、そのような印象も消えてしまうかもしれません。何よりも、糖尿病治療におけるインスリンの重要性は、いかに新薬が出ようとも、その有効性と安全性を考えると消えることはないと思います。
インスリン注入器も注射針も随分進歩し、取り扱いの難しさや注射による痛みも随分軽減されています。また選べる製剤も増えて、投与方法の選択肢が増えました。
インスリンは適切な時期に、適切な方法で開始する必要があります。時には糖尿病発症してから早い時期に1日3回毎食前打つことにより、自身のインスリン分泌を回復させようという使い方をすることもあります。 - インクレチン
- 新しい用語ですが、一般雑誌やテレビなどの糖尿病に関する特集で頻繁に登場するようになりました。血糖を下げる新しい作用機序を持ち、“インクレチン関連薬”としてまとめられる経口剤のDPP-4阻害薬と注射薬のGLP-1受容体作動薬が発売されましたが、これらはその名の由来通りインクレチンというホルモンを増やすことで血糖降下作用を示します。
- 詳細な説明はさておき、期待される理由を挙げてみましょう。
- 低血糖が少ない。スルホニル尿素薬と併用する場合はその限りではありませんが、 この薬剤は「上昇した血糖値に見合うだけ膵臓からインスリンを出させる」作用を持っていますので、低血糖を起こす危険性が極めて低くなりました。
- 体重増加の傾向はない(DPP-4阻害薬)か、むしろ体重は減る傾向が認められます(GLP-1受容体作動薬)。
- グルカゴンというホルモンがあり、血糖値の調節に大事な役割を果たしています。インクレチンにはインスリンに対する作用だけでなくグルカゴンを制御する働きがあり、結果として血糖値に好ましい作用を持っています。
最近iPS細胞に代表されるように、究極の治療としてインスリンを分泌する膵β細胞の再生が話題になっています。まだまだ動物実験でしか証明されていませんので過大な期待は持てませんが、このインクレチンは膵β細胞の再生に働く可能性が考えられています。
限られた紙面では書ききれませんが、糖尿病治療に新しい“武器”が加わるのは間違いなく、その恩恵を受ける患者さんも多いのではないかと期待します。
参考図書 「糖尿病治療ガイド 2010」(社団法人 日本糖尿病学会編、文光堂)
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